IIRフィルタの安定性

Interface誌9月号の特集では、アナログフィルタの伝達関数W(s)から始めてIIRフィルタの伝達関数H(z)を求める方法が、丁寧に説明されています。この説明のすばらしいところは、必要な手順それぞれについて、なぜそのような作業が必要なのかきちんと解説がなされているところです。言葉を変えれば、ある手順をすっ飛ばすとどうなるか、読者が知る事ができるようになっています。
さて、残念ながら特集はこの伝達関数を求めるところで終わっています。Scilabを使う場合はこれでいいかもしれませんが、実際のDSPではバイクワッド・フィルタの縦続接続形式で実装する事が多いため、因数分解が必要です。その場合、分子と分母の組み合わせはIIRフィルタの安定性に影響を与えるため慎重な選定が必要です。Scilabで学ぶディジタル信号処理―DSPシミュレータで試しながら理解できる (ディジタル信号処理シリーズ)にはその点の指摘があるのですが、やり方までは書いていません。昔何かの本で読んだな。
ツールに任せれば済むことですが、まかせっきりだと魔術と見分けがつかなるため軽いフラストレーションを感じます。仕事でやっているわけではないからこそ、少し掘り下げておきたいところです。とはいえ、因数分解は嫌いだ〜
もう一つ、固定小数点DSPの場合、縦続接続したバイクワッドの接続点で信号の絶対値が1を超えるような設計にすると、飽和が起きます。浮動小数DSPでは気にならないのですが、忘れてはならない点ですね。FPGAでは回避可能ですが、知らなければ回避できないのは当然です。