IQ伝送路のアンバランスとイメージ妨害

RockyのIQバランス補正機能を見ていて、実際のところアンバランスによりどの程度イメージ妨害が発生するのか興味がわきました。
Softrock40系のオーディオ帯域SDRの場合、ミキサーが理想的であると仮定すると、ミキサーに続くLPFのアンバランスによって、IQのバランスが崩れます。その結果、複素回転子の描くらせんが崩れ、正の周波数信号なら負側に、負の周波数の信号なら正側にイメージが発生します。時サイドの程度の妨害が起きるかScilabで計算しようとしたのですが、思い直してみると解析的・幾何的に計算することができると気づきました。

Q路の振幅がδだけ大きな場合

複素回転子の半径が1であるとします。Q路の正弦波の振幅がδだけ大きくなると、それは振幅が1の正弦波と振幅がδの正弦波の重ね合わせになります。前者は本来の信号ですので、後者の振幅δの信号がイメージを作ります。この信号は正負両方の周波数を持ちますので、結果的にイメージの大きさは20*log10(δ/2)dBです。
これは簡単。
ゲインが1%ずれただけで、-40dBものイメージが発生します。5%の抵抗なんか使っていた日には、目も当てられません。

Q路の位相がεだけ進んだ場合

これはちょっとひねりが必要です。Q路の信号を虚軸投影する、複素回転子を考えます。これは本来の信号ではなく、別のものと考えてください。本来の正弦波を作る複素回転子の瞬時のベクトルをOA、εだけ位相が進んだ複素回転子の同じ瞬間のベクトルをOBとすると、

OB = OA + AB

という関係が成り立ちます。ここで、ABは二つの複素回転子の間の差分ベクトルで、OA、OBと同じ速度で回転する複素回転子です。ここで、ABの絶対値は、

AB = sin(ε/2)*2

です。
したがって、イメージの大きさは20*log10(sin(ε/2))となります。これをプロットしてみました。横軸は角度[degree]、縦軸はイメージの大きさ[dB]です。

結構シビアです。

まとめ

Rockyのような自動補正までいかなくても、何らかの校正とそれにもとづく補正は必要です。