100dB

昔は「受信機のRFに要求されるダイナミックレンジは100dBもある」といったことをよく聞きました。
だから高感度、かつ大入力に耐えるフロント・エンドが必要なのです。しかし、そんな高性能のフロント・エンドを広帯域で使うなんてことは夢のまた夢でした。デバイスがありません。
だからRFで一段増幅した後、あわてて大入力に耐えるDBMでIFに落とした後、かっちりとフィルタで切ってAGCをたっぷりかけながらIF増幅するというのが私が「通信機型」受信機に持っていたイメージでした。フィルターでちゃんと切らずにIF増幅を行うと、近接周波数の大入力によって受信機が飽和する危険性があります。
流行のダイレクト・コンバージョン型SDRの面白いのは、アナログ段でAGCをかけないことです。IFデジタル方式のSDRでこんなことをすると、ダイナミックレンジが足りないため、多分使い物になりません。高速DACは高々14bitくらいです。ノイズ・フロアまでのダイナミック・レンジは90dBもないのです。しかもディジタルの場合、S/Nが3dBでは振幅変調系の通信はまず無理です。
ダイレクト・コンバージョン型で無理が効くのは、おそらくAF ADCのダイナミック・レンジがとてつもなく広いからです。24bit ADCのダイナミックレンジは、144dBもあります。後段の演算は単精度浮動小数点ですら、仮数部が24bitです。演算精度は十分です。
要するに新しい地平線なわけで、アメリカあたりのアマチュアが夢中になる気持ちはよくわかります。