よくまとまった参考書

仕事の都合でプロセッサ・アーキテクチャの細かいところまで話が及ぶことがあります。そういった場合、困るのは自分の知識が寄せ集め的であることです。もっぱらこれまで仕事で手がけたプロセッサと、いくつかのx86/68Kプロセッサのことを知っているくらいで、あとは雑誌の読みかじり程度の知識しかありません。
この本は筆者が何度も引用しているコンピュータ・アーキテクチャのお手軽&拡張版になっています。現代的なプロセッサによく出てくる用語や技術に関してかなり詳しい説明があります。
内容はあとがきで筆者が白状しているように雑誌記事の寄せ集めです。書かれた年代が違いますので場所によってはかなり古臭い話が出てきますが、そこはご愛嬌でしょう。
さてこの本の筆者はMassa POP Izuimida氏の頭脳放談:第27回 RISCの敗因、CISCの勝因 - @ITを取り上げ「性能=周波数」とIzumida氏が思っている節があることから氏を「x86な人だなぁ」と述べています。読後それとほぼ同じことを、筆者に対して感じました。筆者の中森氏は非常に詳しくアーキテクチャについて述べていますが、言葉の端々に専用プロセッサに対する軽視を感じます。それは蔑視とはまた違うのですが「俺とは関係ない」的なものを感じるのです。氏にはメディア・プロセッシングや制御といった問題の視点がかけている節が感じられ、「汎用プロセッサ」な人だなぁと思います。
メディアプロセッサや制御プロセッサは特殊な要求をもとに作り出されます。現代においてはほぼすべてSoCの枠組みの下、チップ内部に閉じ込められるのですから関わる人にしか分からないのは仕方ありません*1
今後、MeP、UniPhiere、Cellといった大手メーカーの独自チップがメディア処理コアとして専用チップ内に潜行すると、メディア信号処理のブロック経済化が進み一般の関心が極めて低くなることが予想されます。専門分野は専門家にしか解説できません。せっかく日本人が開発しているのですから、各社とも積極的にアーキテクチャについて詳細を語って欲しいものです。

*1:TriMedia / Nexperiaなんか面白い方向に進んでいると感じます。もっと声を大に叫べばいいのに。