ARM社の考え

大原雄介のEmbedded Processor Forum 2004レポートにARM社の発表が紹介されています。
さすがに組み込み分野でも長期的に成功を続けてきた会社となるといろいろ考え、さらにはそれを表現してくるんだなと感心します。たとえ恣意的なものであっても。
マルチプロセッサにすると消費電力が下がるという話はようやく浸透しつつあります。今回ARM社はもう一歩進めてマルチプロセッサにでもしなければトランジスタを使いきれないという悲鳴を率直に表現しています。与えられたトランジスタを使い切るプロセッサを開発していくと指数関数的に開発費が上がりますが、すでにあるプロセッサを4つ詰め込めば開発費は安く済みます。
今後どこまでプロセッサに対する要求は増えていくのでしょうか。少なくとも実時間の動画コーデックまでは要求があると思いますが、その上さらに能力を求められるかどうかはまだ明らかではありません。そろそろ手のひらデバイスもCRAY-1並みになってきましたが、計算能力を要求するアプリがごく小数になると、そんな少数派の客のためにバカスカ投資できないというのがARM社の本心だろうな、と感じました。
新たに披露されたDSP IPであるOptimoDEに関しては低消費電力VLIW構成とのことですが、考えてみるとVLIWは割合Configurable化しやすいアーキテクチャーです。コンパイラさえきちんと供給されれば合理的かもしれません。一方で、アセンブラはどうなるの?という疑問はまだ払拭できないでいます。DSPの場合まだまだソフトウェアに大きな付加価値をつけて売ることができますのでアセンブリ言語の互換性はビジネス上避けて通れないと思います*1
なお、筆者による苦しすぎる言い訳が最後に書いてあって、なかなかほほえましいです。

*1:私がそう思っているだけで業界ではもう終わっているのかもしれません