西谷隆夫の回顧録

chuckさんから「NECの西谷さんの書いた文書が公開されている」と教えていただきました。ありがとうございます。
西谷さんに関しては、信号処理に携わる人はもっと知るべきだと前々から思っていたのですが、紹介されている文章は、彼の研究者半生を振り返るだけでなく、ディジタル信号処理の歩みと、折々に火花を散らすことになった先端技術や標準化の話があって興味深いです。また、NECにとっては負け戦になった汎用DSPの分野についても、時間がプライドを洗い流したのか、率直な批判を読むことができます。
とくに、ADPCMの規格標準化にまつわる駆け引きなど、その場にいた人にしか書けない内容が実に興味深いです。
一点だけ引用

ただし、種々のマニュアル類は理解しにくかった。
…中略…
ただし、このようにしみじみと思うのは、私がNECから大学へ転出して種々のデバイスやシステムを扱い始めた後である

これはすべてのソフト、ハード設計者に胸に刻んで欲しい言葉です。設計者は設計ツールの専門家ですが、必ずしも設計される製品の専門家とは限りません。こんなことをLSI設計者に言うと激怒するさまが目に浮かびますが、自分達が井の中の蛙であることは常に意識して欲しいものです。