トラブルシュートの時に書く文書

レポートの書き方なんてある種感覚的なものでいいはずなのですが、書き方講座がすさまじいブックマークを集めてたりしてびっくりデス。それならいっちょ私も書いてみましょう。ようし、お父さん張り切ってブックマーク集めてみんなを信号処理に引きずり込んじゃうぞ。
技術的なトラブルが発生して、自分がその解明・解決の主体*1になった場合、書くべきレポートには以下のようなものが考えられます。

  • 解明・解決策を探っているときに上司に宛てる報告書
  • 解明・解決後に組織に納める報告書
  • 解明・解決策を同僚に知らしめる報告書
  • 問題が発生しないよう顧客に知らしめる報告書

どの報告書を書くべきかは、自分が属する組織によります

解明・解決策を探っているときに上司に宛てる報告書

いわゆる進捗状況のレポートです。たいていの会社でこれが必要になるでしょう。会社が書けと言わなくても、書かないとあなたの立場が悪くなるからです。この文書に大きな誤解をしている方がいますが、本質的にこれは会社に何を求めているかをアピールするための文書です。
求めるものは場合によります。

  • より多くの人的資源
  • より多くの機材
  • 時間と忍耐

いずれも黙っていては手に入りません。黙っていると上司は不安になり、現場の外から意味のない罵声やプレッシャーを与えてくることになります。これを止めさせるには上司が納得するための文書を定期的に出すしかありません。
こんな文書を書くのは無駄だ、と思うかもしれません。あなたに無駄と思えるなど、どうでもいいことです。あなたが人の上司になればほしくなりますよ。
さて、上司を黙らせ、自分に必要な物を手に入れるために報告書を書くのですが、次の点が重要であると認識してください。

  • なぜ解明・解決に当たっているか
  • 解明・解決しないとどのようなインパクトがあるか
  • 進捗はどうか
  • 今後どうするつもりか

これらを、ぱっと読んでさっと理解できる報告書にまとめる必要があります。

なぜ、今解明・解決に当たっているか

「お前がやれと言ったんだろう」。ハイ社会人失格。
ここは、重要です。ピリッとした文章で自分がやっていることを伝えたいものです。「なぜ」というのは目的を問うているのですからここには目的を書きます

  • 「目的:xx社でのyy製品不具合解決のため、zzと協力の上で現象を解明する」

こんな感じです。たいてい報告書のタイトルは「xx問題について」といったぬるいものになりますので、ここでスパイスを効かせます。ここをきちんと書けば、上司も読むときに身が引き締まり、以下の報告を重要視してくれます。それはあなたにとって重要なことなのです。

解明・解決しないとどのようなインパクトがあるか

「これ解決しないとまずいでしょ」を、相手にどう悟らせるかです。
会社が関心を持つのはビジネスです。ですから、ビジネス状況を書くだけでも随分インパクトがたかまります。

  • 問題の製品
  • 年間出荷額
  • 量産開始時期
  • 営業や顧客の連絡先など

顧客所在地や最終製品も書けば、ビジネスとリンクしやすくなります。上司が営業と話をするときに話がつながりやすくなります。問題が解決しないと言うことは、このビジネスがつぶれると言うことですから、実際にはこのようなビジネス状況をポンと書いておけば十分です。余計な事をぐだぐだ書くと説得力がなくなります。
大事な事は、この点をレポートの頭で明らかにしておくことです。自分が技術職で技術的問題の解決に当たっているからと言って、ビジネスより技術問題を上に置くようではダメです。それでは上司を説得できず、必要な資源を手に入れることはできません。

進捗はどうか

この点はそれこそフリーフォーマットです。何を書くかはあなたの仕事と職場環境によります。たいてい、

  • 目標と状況を再度明確にし
  • どのような戦術を立てて
  • なにを行ったか

を書きます。目標と状況とはたとえば、「xx時に異常状態になる問題を解決」する上で、「現在わかっているのはyy」といったことです。基本的には目標も状況も最初はもやもやしています。それが顧客へのインタビューや技術的調査でまず目的が定まります*2。その上で、各種の状況を明らかにしていくことで原因の可能性の範囲を狭めていく、というのが中規模以上の問題の解決アプローチです。
日々の作業によって、何が明らかになったかを報告書に書いて行きましょう。重要なのは、反証によって捨てた仮説も残しておき、「xxなのでこの可能性はなくなった」と書いておくことです。あなたの上司が誰かに救援、助言を頼むとき、この情報は非常に重要です。見えない救援者が既に検討済みの仮説を提案してくるくらい無駄なことはありません。一方で、あなたの行った検証が間違っていると誰かが指摘してくれるかもしれません。ですので捨てた仮説も書いて置くのです。

今後どうするつもりか

ここが本当に書きたいことであり、ここを読ませるために上のようなお膳立てを行ってきたのでした。
作業する上での方向性をきちんと書いておきます。この方向性が明確で、妥当なものなら、上司はあなたに少なくとも時間猶予を与えるでしょう。ビジネス状況が時間を許さないなら、人的・物的援助を真剣に考えてくれるに違いありません。
援助が必要であればここにはっきり書きます。ここまで書いたことが説得力あるものなら、必要な資源が提供される可能性は高くなります。

報告書は無駄か

仕事がきついときにこんな報告書を書くのはたまりませんが、1,2日に1度進捗を知らせるというのは組織にとって重要なことです。そして、あなたの状況を悪化させないためにも重要です。
ポイントは手を抜くことです。第1回のレポートを書いたら、2回目以降は目的やビジネス状況について書く必要はありません。それはコピペしてそのまま使い回しします。変更があるのは進捗と今後の方針です。ここは毎回書き起こしてもいいのですが、前回の報告を半分くらい残したまま赤字で書き足すと言うのはうまい方法です。これは美しい報告書からは程遠いですが、変化が一目でわかるため、忙しい上司にどこを読めば良いか教えてあげることができます。「で、俺は何をすればいいんだ」と思っている上司に正しい指針を与えるのが良い報告書です。
進捗と方向を定期的に報告するというのは、自分の仕事を見直す上でも重要です。疲れきっているからこそ、あらためて作業を振り返るのが大事になります。振り返れば、自分が気付かなかった落とし穴や可能性に気付くかも知れません。翌日はそれに基づいて作業をすればいいのです。また、自分が書いた報告書の系列を読み直すと言うのも、いろいろ役に立つことが多いです。
長くなったので続きは次回。

*1:解明と解決は違う。どちらか、あるいはその両方を担当することになるが、キリがないので、以下適当に行間を読んでほしい

*2:本当の問題が明らかになる